2009年07月17日

直球ど真ん中の反戦映画「スカイ・クロラ」

憲法記念日|09年5月3日・社民党 1:37分頃からスカイ・クロラについて
http://www.youtube.com/watch?v=zlmJizovj9M&feature=channel

(敬称略)(ネタバレm(._.)m ゴメン)
○アトムの子らによる精神の所産
 戦後のアニメ史は劇場映画の東映動画とテレビアニメ開闢者手塚治虫の虫プロとの2大勢力が牽引し、後に数多くのアニメスタジオが設立され、多製産体制が維持されることとなります。
 手塚はマンガで社会に対し直裁な告発を行ない、触発された作家たちによって70年代にはマンガは表現・内容共に成熟期に突入します。東映動画出身の宮崎駿はアニメ「もののけ姫」(1997)にて天皇教との頂上決戦を果たし、以後は若年層に対する「生き方」について励ましを込めた作品へと転じて行きます。
 「Noir」(2001)に触発されたと推測される竹田青滋プロデューサー(TBS)「機動戦士ガンダムSEED」が2002年に登場、Production I.G製作BLOOD+(ブラッドプラス)(2005)にて驚愕すべき大胆な映像表現でアメリカ帝国主義批判を展開します。
 「キル・ビル Vol.1」(2003)年のDVDにProduction I.G石川光久社長が、ジブリ鈴木敏夫とのプロデューサーとの会話について触れています。共労関係にあった2社が綱引きをしているような事が語られています。
 私の観察では、興行としてはジブリが優勢ですが、現在「アトムの子」としての遺伝子を引き継いだのは竹田青滋作品群とProduction I.Gの押井守とその門下の方々のように見受けられます。

○恋愛作品としての「スカイ・クロラ」
 知人に「スカイ・クロラ」について薦められていたのですが、「攻殻機動隊イノセンス」のようにまた難解な映画なんだろうと考えて、「はー、そうですかー」と上の空でした。憲法記念日に福島みずほ社民党党首が「スカイ・クロラ」について触れておりまして、慌てて見ました。
 出だし、「震電」を近未来風にアレンジした戦闘機「散香」のドッグファイトから始り、脱出するパイロットを機関砲で撃ち殺すという衝撃的なシーンが出てきます。まずは登場人物達が抱えている「目的」を的確に表現するわけです。
 Gonzoが培った「戦闘妖精雪風」(2002)「LAST EXILE」(2003)の空中戦のテイストが反映されているとも言われています。「戦闘妖精雪風」は近未来ジェット戦闘の最先端を行く映像作品であります。「スカイ・クロラ」レシプロエンジンのプロペラ機ではありますが、本作品にも映像表現技術が導入されているようです。
 キルドレは近未来の特攻隊です。しかも、死んでも前任者のクローンが再赴任してきます。再赴任してきた函南優一(ユーイチ)の未来を切り開くため、上司として、草薙瑞季の母として、女として草薙水素は絶対に倒せない強敵ティーチャーに挑みます。ティーチャー負けて果たせぬ想いをユーイチは引き継ぎ、死して未来を繋ごうとします。
 犬は除くとしてすべての人物の挙動や台詞に、表立ったものとは違う意味が含まれており、それが最後に判然とするとき、作品が繰り出す強烈なメッセージが見ているものを打ち倒します。スカイ・クロラは精緻に計算しつくされ、これ以上にない鮮烈な恋愛作品として仕上がっているのです。

○反戦作品としての「スカイ・クロラ」
 スカイ・クロラで検索すると上位に竹熊健太郎のふざけた感想文が出てきます。しかも、それを引用したブログまであります。竹熊健太郎の感性が腐っているのか、「他人の評価」という空気を読みすぎているのか、作品が投げかけているメッセージを汲み取るだけの一般教養が無いのか、それとも、3つとも含んでいるのかわかりません。他のブログなどを見るとある意味「一般的な意見」です。
 一つには反戦作品としての「スカイ・クロラ」という視点が抜けてしまっているのです。本作品は社会的なメッセージを抜いて見ても素晴らしい映像作品です。ですが、私は「作家・押井守」が込めた意志を受取り、咀嚼してみたいと思います。
 「スカイ・クロラ」を見ると「読売新聞」が頻繁にでてきます。紙面では戦争体制を煽る記事が踊っています。出撃基地はアイルランドを思わせる風景で、イギリスと欧州ヨーロッパ大陸を挟んでの大規模合同作戦には「日本人」と「ポーランド人」がでてきます。 傭兵としてヨーロッパの代理戦争をやらされている特定の人種として「日本人」は「ポーランド人」と一緒に出てくるわけです。大国間の代理戦争をやらされる、弱小国家もしくは人種として翻弄される様が描かれます。
 単に劇場映画「アヴァロン」のポーランドロケの体験から、そのような人種選定になった可能性もありますが、「スカイ・クロラ」でも「ポーランド」事前ロケを行なっています。
 「キル・ドレ」は高校生ぐらいの子供です。草薙水素(スイト)は見た目はなで肩の子供の体つきですが、歴戦を闘い抜いた老練な司令官です。
 中国で、終戦間際にソ連戦を戦った人によると、突撃前日には酒が振る舞われました。その人は隠し持っていた高級ウイスキーを一人で飲んでいたで助かったそうですが、他の隊員達は数人ずつ車座になって飲んでいたので、地雷を爆発させて自決してしまう組がでたそうです。そして、いざ戦闘となると、若い兵隊ほど地雷を背負って突撃していったそうです。年配の人はなんだかんだと背負わなかったそうです。
 前任者のクローンであるユーイチは技術は伝承されていても、生きた経験は短いのです。文字どおりの若者です。若いから死ねる、もしくは、自らの意志で死地に赴くことができるわけです。「スカイ・クロラ」は特攻隊の精神構造を反映し、現代の持てる表現でその背面に潜む非情な様を、私達に問いかけているのです。

○音響に関して
 AIR氏によると、「スカイ・クロラ」の音はデジタル・マクロフォンによって録音されたのではなかろうか、という御指摘をされています。
-AIRの暇つぶし日記 2009/03/09(月)  スカイ・クロラ。から転載開始-
http://diary1.fc2.com/cgi-sys/ed.cgi/airair/?Y=2009&M=3
http://diary1.fc2.com/cgi-sys/ed.cgi/airair/?Y=2009&M=7
デジタル・マクロフォンは、まだ出てきたばかりの技術と言える。
マイクがあってもそれとのインターフェース、操作が重要であり、開発費も膨大、録音システムへの導入経費もかなりかかりそう。
(略)
スカイウオーカー・サウンドとかなら、金はあるので、採用しているのかもしれない。
何故かと言うとスカイ・クロラの音を聴くと、マイクケーブルのロスを感じさせないものがあるからだ。
-転載終わり-

○キャスティングについて
 「スカイ・クロラ」は興行上保険をかける意味で有名俳優陣を声優として充てたのかもしれません。菊地さんの「かわいそうなんかじゃない。侮辱だ。」はハッとする名演技だったと思います。
 しかし、控えめすぎる表現で台詞を入れていると思われるキャストもいらっしゃって、キャスティングについては考慮の余地があったのではないかと思います。
 日本の声優の技量はとても優れています。つとに名を馳せている名声優を起用した方が後世の評価は高めることとなったでしょう。
 アニメーションは日本が誇る総合芸術であり、日本という国が地球上から消えても、ジャパニメーション作品群は日本の一時代を記憶する歴史の産物として、文明社会が続くかぎり未来永劫引き継がれていく事でしょう。その作品を彩る声優さん達が吹き込んだ肉声は、同じ時代を生きた私達が未来へ託したメッセージでもあるのです。

(参考)
福島みずほの人権いろいろ
父から引き継ぐもの
http://www.kaihou-s.com/iroiro/iroiro_0902.htm
スカイ・クロラと崖の上のポニョ 2008/8/27
http://mizuhofukushima.blog83.fc2.com/blog-entry-944.html
スカイ・クロラ 2008/8/10
http://mizuhofukushima.blog83.fc2.com/blog-entry-923.html
憲法記念日|09年5月3日・社民党
http://www.youtube.com/watch?v=zlmJizovj9M&feature=channel
1:37分頃からスカイ・クロラについて
posted by たかおん at 23:04| 埼玉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | アニメ批評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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