2011年09月25日

シカゴボーイ古賀茂明氏の退場とラストエコノミックヒットマン竹島一彦公取委員長。

1.日本語の「新自由主義」とは資本家優越主義に他ならない。
 紆余曲折あって古賀茂明氏が辞任した。一部では英雄扱いされている古賀氏だが、著書『日本中枢の崩壊』を読めば分かる通り、大前健一氏に近いスタンスだ。産業構造を大胆に変えて活力を蘇らせるということだ。私には「金の卵を産む鶏を殺して金を取ろうとしたが、鶏は死んでしまっただけだった」という逸話に描かれる失敗を好き好んでやろうとうしているようにしか見えない。
 古賀茂明氏は小泉竹中渡辺喜美らの資本家優越主義者らの残党に過ぎない。日経新聞も古賀氏を支援しているそうだ。通例で小泉竹中改革は新自由主義という言葉を充てるようだが、英語ではネオリベラリズムが該当する言葉のようだ。しかし、彼等の改革とは、資本家側の立場に立って産業や金融を制度変更するのだから、翻意としては「資本家優越主義」であるべきだろう。

2.後ればせながら和訳が出たナオミ・クライン著『ショックドクトリン』
 最近、ナオミ・クライン著(Naomi Klein) The Shock Doctrine: The Rise of Disaster Capitalism (『ショックドクトリン惨事活用型資本主義の台頭』)の翻訳がようやく出版された。最近は「美人なんとかの本」と半分お世辞で著者が美人だというのを売り文句にした本が流行っているらしいが、ナオミ・クラインは本当に美人なのだ。だから皆さんも読みましょう、というのは冗談だが、この本は衝撃的な内容故に翻訳されないとまで言われ、まことしやかな噂が流れた・・・というか私が流した(^^;
 英語版なら安いのだが日本語版は高い、実のところ私はまだ読んでいない。結局英語の壁に阻まれた。脳学者の言う「バカの壁」というのがあるのかもしれないが、日本人とっての「バカの壁」の一つとして「英語の壁」は厳然として存在する。英語は話せなくても書けなくてもよいが、読めないと確実に損をする。むしろ、日本人は英語は話せない方が良いという人もいる。なぜなら、日本人がバカなのが外国にばれてしまうからだそうだ。それはともかく、英語の読解は今後絶対に欠かせないだろう。日本人全員がネィティブ並にスラスラ英語を読めたら、Amazon.comで『ショックドクトリン』を注文して熟読し、日本国を襲った金融収奪を阻止できたのかもしれないのだ。
 著作の内容はデモクラシー・ナウ!のインタビューで知った。注目すべきは、自由市場改革を唱えたシカゴ学派の学者らは、他国の経済支配をもくろむ帝国主義者と資本家の学術的な尖兵であったという事だ。この『シカゴ学派』に注目して欲しい。


3.古賀氏主導による純粋持ち株会社の解禁
 『日本中枢の崩壊』第7章230頁〜250頁に純粋持株会社の解禁に至る経緯が書かれている。古賀氏をして「私の官僚人生で最も大きな仕事である」と言わしめた独禁法九条の改正である。
 著書から引用しつつ概要を説明したい。
--引用開始--
(部分的に省略有り)
 日本の独禁法九条では「純粋持ち株会社の禁止」が定められていた。小数の財閥が独占的な地位を利用して経済、そして社会全体を牛耳っていたことが戦争の原因の一つだ。そう考えたGHQは、戦後財閥解体を実施した。経済民主化の柱の一つである。
 財閥は持ち株会社を中心として運営されていたので、占領が解けた後も財閥が息を吹き返さないように、独禁法九条を作って持ち株会社を作れないようにしたのだ。
(略)
 日本の企業のなかには、ほとんど儲からない事業なのに、なかなか撤退せず、横並びで事業を続けているところがたくさんあった。
 多角化して様々な分野に進出していたが、どこかがいつも赤字で、利益率も高いとはいえないうえ、どんぶり勘定になりやすかった。
 子会社は当時でも認められていたが、子会社の資産が全体の半分を以上を占めてはなはならないなど制約が多く、すべての事業を子会社化して独立採算を徹底させるのは不可能だった。
 もう一つ、純粋持ち株会社の解禁が必要だと考えたのは、その頃から世界中でM&A(企業の合併・買収)が非常に盛んになっていたことである。選択と集中という概念もようやく日本で広がり始めた頃だ。
 各社はこれから本格的に戦略的な事業再編に着手するだろう。そのとき、日本の企業だけ持ち株会社という経営形態を封印されていては、自由に事業ごとのM&Aや再編を行うことはできない(M&Aや再編への配慮)
 大蔵省が連結決算を嫌がった理由
 税制の問題。連結決算に関する税制度が必要だが、当時はなく、大蔵省(当時)は法改正に難色を示していた。
 大蔵省が首を縦に振らない理由は二つあった。連結決算は読み解くのが難解で、大蔵省にはそれが分かる人間が三人しかおらず、人材育成もたいへんだし、税の徴収も面倒になるという理由が一つ。
 二つ目は、連結納税を認めると、実質減税になってしまうという理由である。
減税効果がある。連結納税 黒字と赤字で差引き利益は相殺され、税金を収めなくて済む。
アメリカの系列批判。
アメリカから公取を強化せよとの要求が来ていた。私は以前、産業構造課で日米構造協議を担当していた。(公取の強化は、日米の懸案事項の一つだった)

公取に配慮
公取の事務局を事務総局にする。経済部と取引部を統合して経済取引局に、審査部を審査局に格上げする。
公取の事務局長は他省庁では局長に当たる。つまり、一番上のポストが次官級ではないのだ。事務総局にすると、そのトップ事務総長は次官級に、部が局になれば、部長は局長へと格上げになる。次官級ポストはゼロから一になり、局長九は一から二に増えるのだ。
--転載終わり--

 元来GHQが財閥復活阻止の為に、純粋持ち株会社を禁止。日本の企業は経営多角化を企業内部もしくは一部を子会社化して実施していた。各事業の損益が曖昧だった。世界的に企業の合併・買収の流れにあるので、純粋持ち株会社を解禁すべき(この根拠が薄弱)。連結納税に”当時の”大蔵省は抵抗。アメリカは日本企業の系列を批判、及び公取を強化せよと要求。公取は純粋持ち株会社解禁に反対。しかし、公取格上げを餌にして取引した。1997年12月の独占禁止法は改正され、純粋持ち株会社は解禁された。
 要約するとこうなるのだが、非常におかしい話しだ。純粋持ち株会社解禁→産業再編→同業他社が減りカルテルし易い→一方で公取は強化。産業再編を促進させ、価格協定が結ばれやすい土壌を作る一方で、カルテル取締り強化を行うとは矛盾している。単にアメリカが株式持ち合いを通じて日本企業連合体を形成していた産業構造を、外部から見て分かりやすく、買収しやすくする為のようにもみえる。


4.シカゴ学派の独占禁止法の考え方
松下満雄著『経済法-市場の維持と補完の法-』55頁-58頁から
--転載開始--
 ハーバード学派の思想の根底にあるのは、分権的・多元的社会を理想とする社会体制観である。この思想によれば、権力の集中は腐敗の温床となり、また国民に対する圧政の基になるとされる。このような集権的体制にあっては国民の自由が侵害されるので、権力の集中を防止することが必要になる。政治体制としては、三権分立、連邦制度等により権力の分立とその相互間の抑制・均衡を図り、これによって政治的自由を確保することが必要である。ハーバード学派はこのような分権的体制は経済の領域においても必要であると主張するものである。すなわち、経済権力の集中によって、複数の企業が市場において相互に併存して競争を展開するという分権的・多元的経済体制が危機に曝される。そこで、独占禁止法の適用によって独占の禁止や企業間の競争制限(カルテル)協定を禁止して、多数企業が市場に存在して相互に競争を展開できる条件を維持すべきであるとする。
 ハーバード学派の思想においては、独占禁止法の適用は厳格にすべきであるという結論になる。たとえば、独占的企業はそれが市場において支配的地位にあるという理由で問題視すべきものとなり、市場占拠率が大きな企業はそれが大きいという理由によって危険な存在とみなされ、分割すべきとされる。また、大きな支配力が生ずるような企業合併は原則とて危険視されるべきこととなる。この思想においては、大企業の支配に対して中小企業の企業活動の機会を確保することも重要な事項と考えられる。
 以上のようにこのハーバード学派によると、独占禁止法はカルテルに対して厳格に適用されるべきことはもちろん、さらに独占、企業合併、垂直的制限(たとえば、メーカーが販売特約店に対して課する地域制限、競争品排除等)などについても厳しく規制すべきこととなるのである。
 ハーバード学派は米独占禁止法の伝統的な思想であるが、1939年代のニューディール政策の後期より盛んになり、1960年代の後半から70年代の前半に最盛期を迎えた。しかし、その後、以下に述べるシカゴ学派が有力になった。しかし、現在においても、この思想は米独占禁止法の究極にあると考えることができ、米民主党は伝統的にこの思想を維持している。現在、米行政府は共和党政権であり、シカゴ学派の思想を警鐘しているが、議会においては民主党が優勢であり、この意味において、この思想は米政府にも影響力があるとみるべきだろう。
 これに対してシカゴ学派は現在米国において有力な思想であるが、これによると独占禁止法の目的は、生産量の極大化と経済の効率化の増進にあるとされる。この思想においては、カルテル(企業間の協定によって相互の競争を制限すること、たとえば価格協定)は生産量の極大化や経済の効率化に資することがないので禁止されるべきであるが、独占、企業合併、垂直的制限等を原則的に独占禁止法上違反とすべきではなく、これらが競争にいかなる影響をえたえるかについて、ケース・バイ・ケースに経済分析を行ってそれらの当否を決定すべきであるとされる。
 (略)
 シカゴ学派の思想においては経済権力の集中排除、分権的・多元的経済体制の維持、中小企業の事業活動機会の確保等の「政治的価値」はあまり重視されず、もっぱら経済的価値が追求されているということができよう。この思想は1970年代の半ばより盛んになり、現在はそれの最盛期にあるといえよう。米行政府においては、この思想に基づいて独占禁止法の施行が行われており、最近は裁判所の判例においてもこの思想が有力になりつつある。この思想の背景には、米国の産業が日本等の産業との国際競争に直面しており、経済的効率性を重要視せざるを得ないという事情があるものと思われる。
 ともかく、シカゴ学派の思想によると、独占禁止法の規制はカルテルに対して厳格に行おうべきこととなるが、それ以外のい局面に関してはハーバード学派による場合に比較して、より企業活動にとて寛大なものとなる。そして、この学派の思想による場合には、独占禁止法による規制があまりにも強力であるのと、それ自体が過剰介入となり競争を疎外するとされる。
--転載終わり--

 ハーバード学派は独占、企業合併、垂直的制限を行い経済権力の集中を排除する事を主眼としており、シカゴ学派は産業競争力逓増を主目的して、企業合併に寛容である一方でカルテルに対しては厳格に臨むという方針だ。
 古賀氏はシカゴ学派の思想に基づいて行動してきたと言える。

5.公取が日本産業界を潰そうとしている。
 先日、「ベアリング」4社価格カルテルの疑いで、強制調査が行われた。3年前には亜鉛鋼板のカルテルで捜査があった。
 元財務官僚の竹島一彦公取委員長の元、2005年1月に独禁法が改正され、公取は『1.犯則調査権、2.課徴金の強化、3.課徴金減免制度』を手に入れた。
 これによって、公取は国税並の強制(犯則)調査と、「密告すれば刑事罰を見逃してやるとともに課徴金を減免する(課徴金減免申請・リニエンシー)」という日本では前例の無い司法取引制度を得たのだ。
 ベアリング各社にしても亜鉛鋼板にしても、価格値上げの背景に原材料価格の上昇があった。一斉値上げには業界取引の混乱を引き起こさない利点もある。原材料価格の値上げを卸し売り価格へ転嫁する事には正統性がある。
 東日本大震災以後、放射能汚染によりベアリング各社の製品は海外市場から返品を受ける事態にあり、正真正銘未曽有の危機的状況にある。そこにカルテル強制調査が行われた。しかも、悪名を馳せた東京地検特捜部との合同捜査である。報道されていないが、国税庁が関連企業にまで税務査察に入っている。

 言葉がでない、と言うか言葉にしたら私が逮捕されてしまう。小室直樹博士の言うところの「全員電信柱に●るせ」の世界だ。
 東京地検特捜部は組織の生き残りを賭けている。公取も特捜も元はGHQの一部だった。歴史的な流れを考えると、二つの組織は同根なのである。

 公取を使った日本産業界への攻撃は、帝国主義者が日本の日本産業界弱体化を狙っているとしか思えない。しかし、本家本元のアメリカは崩壊過程にある。本丸は燃えているのだ。シカゴボーイズやエコノミックヒットマンは歴史の舞台から消える流れだ。古賀茂明氏に続き、竹島一彦公取委員長も公職から退くべきだ。

(参考)
公正取引委員会委員長 竹島一彦とは何者か
http://p.tl/E7jA
posted by たかおん at 00:02| 埼玉 ☀| Comment(0) | TrackBack(1) | 経済問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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