3月10日に秋葉原ラジオ会館8Fにて行なわれた、FOSTEX(フォステックス)の「レッツクラフト! クリエイティブセミナー」の報告。
話題の限定版新製品の「FE208ES-R」の発表・試聴及び、ステレオ誌の「長岡鉄男のオリジナルスピーカー未完成モデルをつくる」というコーナーで作られたスピーカーの試聴記。
■「BS92(9月号掲載)」
16cmフルレンジユニット(FE167E)一発。
スリットタイプのバスレフ。
音鮮度は良く明瞭。
低音が、バスレフっぽい音色。
フルレンジ一発なので、ツィーターが無い分ナローレンジ。
■「BS-91.1(10月号掲載)」
20cmウーハー(FW208N)&ツイーター(FT28D)(逆相)による、2Way。
高音明瞭。低音伸びてる。ベース音明瞭。
低音はBS92と同じくバスレフっぽい。
高音はドーム型なりの軽い感じ。
■「F-168(1月号掲載)」
「世界でただひとつ自分だけの手作りスピ−カ−をつくる」(講談社)から
ウーハー(16cm)が上に付いたモデル
特性はよい、フラット
ツイーター「FT48D」にATTをいれて15db下げ。
ウーハーはコイル無しでスルー接続。
低音は不明瞭で良くない。
おとなしめで無指向性の効果で音場感覚は良い。
■「D-16」12月号掲載
FE-168EΣを使った、ブックシェルフ型?の正方形に近いスタイルのバックロードホーンSP。
T925A 0.47μF 逆相接続
40Hzまでレスポンスあり。深みのある低音。
低音に付帯音があり、少し不明瞭
ボーカルのびやか、張りの強い中音域、全体的に鮮烈な音色。
高音も鮮烈。
■「F−183.1(07年3月号掲載)」
TQWT(Tapered Quarter Wave-length Tube)型SP。
おとなしめだが、素直な低音。
低音の音量は低い。
音は細身。
笛の音は良い。
■「MX-11?(2月号掲載)」
ダブルバスレフ型マトリクスSP
音場は広かったり狭かったり、不思議
低音出なさすぎで論外。
■FE208ES-Rについて
FE208ESよりも5mm奥行が浅く、そのまま、D-55やD-57にも装着可能。
バイオセルロースをベースとして超高弾性カーボンやマイカなどを混抄したハイブリッドコーンになり振動板質量はESの15gから12gと軽くなった、一方、強度は増した。
バイオセルロースとカーボンの2つの成分で55%を超える。
金属並みの伝播速度と、高い内部損失を持つ、理想的な振動板素材のバイオセルロースはからみが弱い。
バイオセルロースが高い含有率の振動板は40年以上のキャリアを持つベテラン2人しか製造出来ない代物。
センターキャップは純マグネシウムで、ボイスコイルボビン直結メカニカル2ウェイ。
バイオセルロースによって、23kHz(−10dB)まではハイブリッド振動板で再生、純マグネシウムセンターキャップは30kHz以上を再生。
208ESは高音域の歪みを避けるため、13Khzより上を落として設計、208ES-Rでは高域を伸ばして、かつ高域・中域の逆共振(歪み)減を実現している。
3.1kg外磁型アルニコマグネット磁気回路
ESのフェライトマグネット2枚による反発磁気回路を超える低歪を実現。
ポールピースには4Nの純鉄を採用し、音の広がり感が向上。
ESのフレームはアルミダイキャストだったが、ES-Rは亜鉛ダイキャストフレーム。
P208真鍮アダプターリングは高域に真鍮の鳴きが乗るので不要とのこと。
■D-57(シナラワン合板)+FE208ES-R
他の機種に比べて、すごい情報量。
ツィーターが無いにも関らず、高音も鮮明にでてる。
全体域高音質、低音はごりっとした感じあり。
多少、BH的付帯音あり。
■D-58ES(シナアピトン積層合板)+FE208ES-R
D-57よりも低音の量感、ローエンドの伸びがあり。悠然とした音。
中高音域はD-57と同等。
■長岡バックロードホーンは長期的には滅亡する
いろいろ比較視聴できて良かった。
TQWTの共鳴管タイプの低音の素直さは特筆物だろう。(但し低音の音量は低い)
F-3000(ネッシー系)の自作を考えているので、音色の参考になった。
バスレフの低音には限界がある。マトリクスSPは再生ソースによって七色変化してトリッキー。
あとは、D-57やD-58ESのメリットを強く実感した。
D-16もD-57やD-58に近い音色だ。
バックロードホーンの良さは低音の抜けの良さだけでなくて、中音の張りにある。
ボーカル帯域の密度が高く、切れも良い。
低音は多少付帯音を感じるが、私の経験だと、BHはデジタルアンプで再生すれば付帯音を低減できる。
デジタルアンプは逆起電力の影響を受けない為か?
会場は満席どころか、立ち見まで出た。私も立ち見だった。
かといって、精々200人程度の話しである。
FE208ES-Rが1本75000円が高いかどうかという以前の問題で、FE208ES-Rを活かすキャビネットをどうやって調達するのかという問題がついて回る。
D-58ESかF-3000(ネッシーmk3)クラスは最低限必要だろう。
既に持っている人は換装するだけだが、持っていない人は自作する?
はっきりいって、自作は止めたほうがよい。
自作の経験がある人は、年齢にもよるが、自作する気にならないだろうし、自作した事ない人は自作してみたい気になるかもしれないが、恐ろしく手間ひま掛かることを前提として行動したほうがよい。
途中でぶん投げるハメになるのなら、作らないほうがよいだろう。
かといって、ヤフオクで出物があるかといえば、スーパースワンはよく見かけるが、D-55をたまに散見する程度である。
D-58はほんとに僅かに見た程度。D-57の針葉樹合板を使った安い品は針葉樹合板高騰後見かけなくなった。
D-150(モア)は「モアの巣箱」本家の首が短いのが出たことあるが、その後、落札者がそのモアを売りに出していた(;^_^A アセアセ・・・。
モアで設計通りの高さのは1度見たきりだ。しかも、それは自分が落札して使っている(笑)。
ネッシーの出物はみたことない。
合板が高騰しているのも自作SPを阻む要因だ。
最大の疎外要因は、BHの音を聞いたことの無い人にメリットを自覚して貰うのは不可能だし、BHの音を聞く機会なんてない。
BHのメリットは長岡先生が書かれていたものの、繰り返しになるが、解りやすいポイントは抜けの良い低音だろう。
DVD-VideoはDTS録音になって、ダイナミックレンジが格段に良くなった。
『ヒトラー最後の12日間』や『トップをねらえ2』は恐ろしい程の高いレベル(音量)の重低音が入っている。
それらを再生した時、映画館の腐った低音を一蹴する。
金払って腐った音響システムの映画館で時間を過ごすのは、もったいない。
けれども、それが一般的な事なので、誰もおかしいと思わない。
誰もおかしいと思わないことに異議を唱えてても無駄なことは痛いほど自覚させられているので、私は自分と理解のある人たちだけでBHのダイナミックレンジの広い生々しい低音を楽しむことにする。
長岡教を布教する必要はない。何せ、布教しても伝搬しないのはみえみえである。
世に蔓延した一般常識を覆すのは容易でない。一般常識を覆すことに執念を燃やした長岡先生がいかに立派で、偉業を成したのかは、長岡BHを眼前に据えて「音」を楽しむ人たちにしか理解出来ない。
BH自身は1930年のアメリカ発祥の技術である。長岡先生のD-1からD-9はアメリカのモデルを踏襲している。
1987年長岡先生設計のD-55頃からFostex側がQoの低いBH向きの限定ユニットを製造しだしてからムーブメントが起きた。長いBHの音道をドライブするだけの磁気回路を実装したFostexのユニットと、それに適当したキャビネットを設計した長岡先生のコラボレーションが奇蹟を産んだ。その奇蹟は2007年FE208ES-Rの登場によって頂点を迎えようとしている。